○○屋さん

自宅近くに、昔ながらの商店街がある。

数年前までは、いわゆる「シャッター商店街」になりかけの寂れ具合だったが、最近のレトロな雰囲気に寄せられる人気とリノベーションブームのおかげで、多少は息を吹き返しているように見える。

軒を連ねる店の大半を喫茶店や居酒屋、理容室などが占めるのだが、ごく僅かに豆腐屋さんや金物屋さんが古い店構えを残しながら頑張っている。
そんな時にふと思うのは、昔はみんな「○○屋さん」だったよな、ってこと。

小さい頃、実家の近くに市場があって、よく母に連れられて買い物に行った。
市場の中には小さな店が並び、狭いスペースに店主のおっちゃんやおばちゃんがだいたいパイプ椅子に座って、それぞれ品物を売っていた。

並んでいるお店は、お肉屋さん、かしわ屋さん(大阪では鶏肉のことを「かしわ」という)、魚屋さんに八百屋さんに、最近ほとんど耳にしない乾物屋さん。みな「○○屋さん」だった。
それがいつの間にか、「スーパーマーケット」なるものに取って代わられ、小さなお店は姿を消し、スーパーマーケットの中の「コーナー」や「売場」に変わってしまった。

なくなったのは「○○屋さん」という名称だけではなく、パイプ椅子に座っていたおっちゃんやおばちゃんたちだった。いわゆる対面接客だ。
もちろん、スーパーマーケットにも店員やスタッフがいるのだけれど、みなギリギリの人員で働いているのかキリキリ動き回っていて、パイプ椅子にちょこんと座っている人はいない。当たり前だけど。

それが悪いのではなく、ただ、商品をお店の人(つまり「プロ」)に相談しながら、時には商品の選別まで任せてしまえるような日常の買い物がしにくくなった、つまりはそういう時代になったのだ、という少しノスタルジックな気持ちを思い起こされる、そんな不思議な効能を持った昔ながらの商店街が、自宅近くにある、というだけのことだ。

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